二か月ぶりの京都での仕事を終え、 今回は熱海からあの伊豆戦争の爪痕伊東線に乗り換え、友人宅を目指す。 ビールでも飲みながらののんびり一人旅である。 新幹線は平日でもありあまり混んでいない。 ビールのプルトップを開ける。 出張帰りの三人連れビジネスマンたちの、二人掛けシートの私の足元に目をやりながらの会話が聞こえてきた。 「先月出張の時、スマホの充電をしようと、わざわざ一本遅らせて自由席の窓際の席を確保して一安心し、充電を後回しにして用事を済ませようとしたら、横の席に知らないおじさんが座ってきて、何も言わずに、自分側の足元にある、コンセントでスマホの充電を始めた。」 コンセントは一つである。 窓際の席の人優先ではないか?とか、せめて一言声をかけるべきではないか?など、もっともらしい意見の応酬も結論が出ず、思わず笑ってしまい、ビールのツマとして、しばらく楽しんだ。 以前紹介した「城攻め」スタンプラリーは今も続けている。 やり始めると他のことができず、位置情報の確認と「城攻め」ボタンを押すことに没頭してしまい、通信容量とバッテリーをみるみる浪費していく。 頻繁に訪れる茨城県南部、東京、新幹線沿線の「城攻め」が多く、アプリが表示する3000城のうち160城のゲットに成功している。 面白い所では、赤坂見附など「見附」という地名は見張り役の番兵を置いた軍事施設だとかで、江戸城の周りで多数ゲット可能。 ひかり号が掛川城付近を通過する際に、「城攻め」の確認のため手に取ったスマホを窓枠付近に置く。 熱海での伊東線のコネクションが悪く、静岡で新幹線こだま号に乗り換えても、ローカル線を使っても目的の駅に到着する時間は変わらず、今回はローカル線で私の中では有名なかつて日本一だった丹那トンネルを通過しようと考えた。 静岡駅で乗り換えると、ローカル線が清水駅でのトラブルで動かない。 こんなことなら新幹線で熱海まで向かうべきであった。 運転再開時間が分からなまま30分経過する。 とりあえず連絡しておこうと思ったところで、重大事件に気づく。 スマホを新幹線の窓枠付近に置いたままで、今頃は新横浜付近か?!
元来、人の時間を突然支配する電話は好まず、メール機能を使うようにしているが、こうなってみると、ことの重大性に気づき始める。 友達に連絡を取るすべがない。 覚えている電話番号はすでに廃止した我が家は固定電話以外では、実家の固定電話くらいである。 ただ、それでは友人に行きつかない。 パソコン内のメールに同窓会名簿があるはずであるがインターネットにつながらない。 脳みそがぐるぐるとまわり悪知恵が働く。 熱海では新幹線には乗らないが、新幹線の改札付近まで待合室のWIFIの電波が漏れているはず! 正解であった! 同窓会名簿から友人の電話番号をゲット。 伊東線出発時間が近まりまずは電車に飛び乗り目的の駅へ向かう。 多少心の余裕も出てきて、車内を見渡すと通勤通学帰りの時間のせいか、補聴器みたいなブルーツースのイヤホンにハンディファンとスマホという三点セットの若者が多く、こんなに不便と不安を汗だくで実感中の自分からはただただうらやましく思いながら、寂れた無人駅の改札を出た。 そこで新たな不安に直面する。 昔なら駅前には必ずあるはずの公衆電話を探すがない! 熱海で電話していれば…、電話はできていたが30分到着が遅れていた! 公衆電話がないままに目的地(友人宅)に到着してしまった。 エントランスを抜けるためには友人に電話をしなければならない。 近くのコンビニで店員の方に店内に公衆電話がないか? 近くに公衆電話がないか? 質問してみた。 期待通りで、コンビニにも近くにも公衆電話はなく、ただし、これも実は微かな期待通りで、コンビニの電話を貸してくれた。 ときにこの人情味は面倒な時もあるが、今回は本当に感謝で、出発まで二度ほどこのコンビニで買い物をさせてもらった。
友人と会うことはできたが、スマホの行方が気になる。 友人のスマホを借りてJR東海の忘れ物センターに何度も連絡するがビジー! しかもお掛け直しくださいとのレコーディングとともに一方的に回線ストップ。 半国営企業のサービスレベルである。 ラインでの対応がメインのようであるが、スマホがない人はラインができない。 クレーマーっぽい気持ちになりながら、友人のラインからアクセスしてみると、スマホだけではなく、カバン、財布、傘、カードなどなど10種類以上の忘れ物の選択ボタンがあり、スマホだけではないことを認識し、クレーマー気分を解除しようと試みたが一度振り上げたものは納まりが悪い。 友人のラインにJR東海忘れ物センターを勝手に友達登録した。 翌朝、東京駅に戻るため、微かな期待をしながら朗報を待った。 朗報なきまま友人宅を出発し、東京駅八重洲中央口のJR東海の「忘れ物承り所」を訪れることにしていたが、熱海駅まで一緒だったもう一人の友人のグループライン経由で、昨日登録したJR東海のラインともだちからのメッセージが転送され、やっと一安心! 二時間後、東京駅でスマホを受け取ることができた。 友人たち、新幹線の乗客、清掃員、忘れ物センターの方、様々な方々にお世話になりながらのスマホとの再会! お互いに長旅であった。 いろいろ感じるところはあるものの何と言う国民性なのだろうとはよく聞くが、実際に体験した。 面倒とかは言えない!
私は若い頃から、気は小さいがやせ我慢(まさにやせているのだが…)というか無鉄砲気味な行動をして周囲を驚かせてきた。 その意味では、旅行時に連絡もなしに不意に現れたり、夜行を使ったり、普通はやらないようなことをするサプライズは、自分の中では話題作りの一環であるような感じなのであるが、やはり年齢に気を遣わなければならない。 若い頃なら起きなかった、突然の体の不調や運動能力の低下による問題はいつでも起きる恐れがある。 また、記憶能力の低下により忘れ物や通常はありえないような出来事を引き起こすかもしれない。 本人は元気なつもりでも周囲に与える心配と迷惑は大きいようである。 それを最小限にするような準備を怠ってはいけないのである。 サプライズの気持ちを持ち続けることは、自分としては継続したいところであるが、準備の上の想定内のサプライズでなければならない。 スマホのテザリング機能、クラウドを活用した連絡先の保存、旅行時に接触するだろう知人、会社、ホテル、交通機関などの情報をメモにすることなどなどである。 当然今もやっているのであるが、スマホの中のライン、メール、履歴、メモ帳、画像保存では意味がないということである。 こんなことを考えていると旅行も遠のいていくのかもしれない。 自分の老いが原因で、活動範囲を狭めたり、活動方法を変えるのは仕方がないが、活動を停止するのは余りにも寂しい! 便利であるがゆえに、小型で持ち運びやすいがゆえに、手帳と鉛筆、電話、文字の伝達、カメラ、パソコン、ビデオ、辞書、ガイドブック、書籍、支払いなど、普段でもそうであるが、旅行になると俄然威力を発揮するのである。
出来たら、旅行の途中では離れ離れにはなりたくないものである…と、反省できるのは、常磐線の車窓からの見慣れた風景を見る時なのである。 やっと巡り合えたスマホは、残念ながら、今日はもう使うことはない。 週末は、何事もなかったかのように、スマホのスクリーンショットや保存された画像を活用してこのブログを編集しているだろう。





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