幸か不幸か、私は終身雇用の軌道を外れて、様々な会社を経験することになったが、今にして後付けで評価してみると、それなりに意味があるものだったようである。 一社目は社会人の登竜門としての洗礼の期間、二社目は運がよかったのだが発展途上の外資系企業で、会社の成長に合わせて社員にも成長の機会が与えられ、様々なことを学んだ。 三社目は外資系つながりでのカタコトの英語と二社目の教育の機会が役に立ち、学んだことを実践することができた。 その後、50代後半の仕事探し。 今でこそお馴染みの転職サイトのお世話にもなった。 管理職経験者の募集はあるのだがマッチングは困難で、多くの履歴書と面接の時間を費やした。 もちろん金銭面もあるが、学んだことを誰かに伝えたいという動機付けはあった。 ただし、会社の規模は小さくなっていく。 会社の規模が小さくなると、管理職を自社で育てることが難しく、外部からの採用になりがちなのである。 ただ、不思議なもので、自分の経験的には出来たことも出来なくなる。 様々な原因があるとは思うが、会社としては従業員をかまっている余裕がないし、従業員はこの会社に自分の多くを捧げたいと思わないようである。
また、外部からの侵入者である私は、会社側、従業員側、両方に対してトンガッた発言をしたいのだが、実績を積むまでは認めてもらえず、また、以前の経験とは土台が違うため、様々な下準備に時間を要するのである。 ただ方法のバリエーションが多いわけではない。 今思い返しても、外資系のときの経験は的を射ていた。
会社が成長していくために最も重要なことは、もちろん経営である。 収入源となる事業の立ち上げと同時に、起業当初からの少数の同士との阿吽の呼吸的なつながりでまとまっているが、徐々に規模が大きくなると、いろんな人が居てまとまりが悪くなる。 事業の成長のためのマネジメントの労力が、人を管理するために割かれてしまうことになる。 よって、人を同じ方向に向かせることが必要で、何をしてどのように成功するかという方向性を示すことになる。 その方向性がキラキラしていればそれだけ人は集まる。 人が集まればその中に優秀な人や優秀の卵も多くなる。 次に重要なことは報酬である。 給料だけではない。 地位、時間、繋がり、知識、経験、充実感など様々なことがある。 振り返ると、社員教育の機会、特にルールを教えるのではなく、社会人としての知識・経験につながる教育が多かったと思う。 要するに、“もらえる”可能性がある会社であれば、従業員は簡単に辞めようとはしない。 それで初めて耳障りなことも聞き入れてくれ、躾けが通用することになる。
「8つのバリュー」というものがあった。 従業員に対する価値観の“押し付け”であり、従業員全員にそのバリュー(大事なこと)が書かれた卓上の置物が名前入りで配られたりして、思い返したり発想の転換をしたりするのには役に立った気がする。 一つひとつは特別なものではなく、よくある単語のオンパレードなのだが…。 【開かれた会話と情報】上下左右制限なく意見を出し合う、【課題解決型】課題には逃げずに立ち向かう、【結果重視】過程ではなく結果が大事、【自律】自分で自分を制御する(私はこの言葉が好きだった、原語ではDiscipline)、【信頼誠実】ドラッガーさんの言葉で言えば真摯である、【仲間を大切に】言語の意味では従業員を大切に…である、【リスクを恐れず!】積極的に挑戦する、【質重視】質の高い仕事。 これらは価値観として従業員の中にあり、経営陣も至るところでこの価値観を使い、人事評価では行動規範の基準であった。 例えば、営業のAさんは「客先での問題解決に尽力した」とか、Bさんの日頃の振る舞いは「高い自律の振る舞いがあり〇〇につなげた」など、キーワードとして活用され、人事考課でも「8つのバリュー」以外の言葉よりも強い印象を与えたし、納得が行くものであった。 現実はこれだけでは不十分であり、不十分な人材を輩出したとも言える。 日本人の感覚での躾けとは違い、一般常識に欠ける人材かもしれないが、会社のためになる人材としては十分だったということかもしれない。
更なる手段は情報公開である。 四半期毎に従業員全員を集めて、背景、売上、利益、良い点、悪い点、今後の展開などを発表するのである。 従業員は自ずと何をすれば会社は儲かるのか、自分への見返りが増えるのかを考え行動する。 いかにも自主性に任されているように見えるが、今後の展開はしっかり部署としての務めに落とし込まれていて、限られた自主性・自由度となる。 つまり、方向性が明確にあり、見返りが期待でき、会社に都合の良い躾けがされていて、業績の評価が公開されているわけである。 私はこの仕組みしか知らないが、たぶんどの会社も存続して成功している会社は同様の仕組みがあるに違いないと思っている。 ところが、小規模な会社では、方向性の幅が狭く在り来りになる。 利益の幅も狭く従業員への還元はあまり期待できない。 会社への執着心が薄く躾けは通用しない。 そうなると信頼関係は薄く公開できないことが増える。 そもそも、起業者の動機は、有名になる、良いものを広めたい、もっと便利に…などいろいろあると思うが、原点は成功すること、儲かること、暮らしを立てることであったはずである。 ただ、その動機づけは未来永劫拡大し続けるものでもない。 どこかでこれくらいで十分となるような気がする(我々庶民にはわからない世界だが…)。 ただ、会社が大きくなればなるだけ、多くの従業員を抱え、彼らに“見返りの期待”を膨らませ続ける必要があり、そうでなければ、去ってほしくない人から去っていくことになる。 起業者の原点の思いからは掛け離れ、会社は独り歩きする。
ジレンマである。 私みたいな“一般常識の欠けた”限られた会社経験では、とりあえず拡大を目指しましょう!と進言するくらいしかできない。 地球や宇宙も限りがあると知り始めた人類の会社というこの仕組み。 拡大し続ける会社ばかりでは、そのうちに衝突が始まることになり、力が強い方が拡大を続けることになる。 従業員の頑張りにより成功し続けた会社のある国はお金持ちになり、その従業員の頑張りは強くなるための武器に還元される。 現代の安全保障のあり方はすでにそのことの始まりなのだろうか? 従業員の頑張りは、暮らしを守ることにではなく、暮らしそのものに還元されるべきなのだが…。





経営者は大変だよね。万全な人はまずいない!創業者は、情熱と意欲と行動力で何とかなったら会社は残る。2代目さんからは、前社長の組織性の強弱や、管理者の育ち具合によって、やらなきゃならんことが、ちょっと変わる。ここがものすごく難しいかな。外部人材のほうが客観視できるかもね。でも、なかなか、その意見を反映するって難しいんだろうね。
返信削除