身近な頭脳集団

 NHKの「ブラタモリ」という番組がある。 このブログでも何度か登場させており、私のお気に入りの番組のようである。 今の時間帯、形体になってから9年になるらしい。 レギュラー番組になる前は、大都市の街歩きで様々な不思議な場所を見つけては掘り下げていく番組だったようだ。 その頃は、タモリが醸しだす業界っぽさは好きな人は多いかもしれないが私は少し引いていて、それにNHKらしいわざとらしさが相まって、余り視聴していなかったのだが、今ではビデオ録画までして保存するようになっている。 子供の頃から地図を見るのが好きで、暇があるとよく地図帳を開いていた。 大人になってからも旅行は好きであるが、観光地巡りというよりは、地図歩きとでもいうか、街とか岬とか地図上の地点に訪れるような旅が好きだったのである。 ところが、京都単身赴任が始まってからは、世界有数の観光地京都の地形や歴史や文化を様々な媒体で確認しながら観光するようになり、その目線では「ブラタモリ」は面白く、観光地やその土地の変遷に興味が湧いた。 日本海から京都に向かう鯖街道は断層のお陰で、そこを運転すると確かにそうであった。 その「ブラタモリ」が今年3月で終了するらしい。 名残惜しいが、最近では断層と岩石の話が多く、ワンパターン化していたので仕方がない。 

久しぶりにつくば学園都市の研究機関巡りをした。 「ブラタモリ」の終了記念というか…、最近放送された産業技術総合研究所、人呼んで「産総研」の「地質標本館」である。 予約なし、入館料無料と年金生活者には優しい場所である。 研究機関巡りは、以前子供の中で列に並んだ経験から今回は平日開館直後を選んだ。 常磐高速道路の桜土浦インターからつくば方面に5分程度、当然我が家からも近い。 半社会主義的に国家が産業を育成してきた、”工業立国日本”の技術を支えた旧工業技術院のイメージが強いのだが、地質標本との関わりはピンとこない。 説明によると現在のキーワードは、「エネルギー・環境制約への対応」、「少子化高齢化の対策」、「強靭な国土・防災への貢献」、「防疫・感染症対策」のようである。 発足当時の研究機関は地質調査所で100年前のことである。 様々な研究機関が合併して巨大化しており、その原点は日本の地中に何が埋まっているか?だったわけである。 当初は地中に埋まったエネルギー源の確保だったろうが、地層を見ることでの日本の成り立ち、断層、プレートの移動、リスクと発展性
とつながっていて、そう考えると合点がいく。 館内は、「地球の歴史」、「生活と鉱物資源」、「生活と地質現象」、「岩石・鉱物・化石」の4つのエリアに分かれており、興味がある人であれば見学に数時間は必要である。 アンモナイトとか先カンブリアとかの用語が出てきて、高校の地学の授業を思い出した。 聞き慣れないカタカナ、現存しない生命体を覚えるのは、苦手だった。 これらが、日本の成り立ち、歴史、文化、未来に結びついていると知っていれば、毛嫌いせずにもう少し興味を振り絞るべきだったと反省する。 ここで素朴な疑問が湧く。 国土地理院は空からの映像も含めて地上の変化に敏感である。 産総研は地下の動きに詳しい。 地表の収縮膨張と地下の動きから地震を予測しているようだが、その予測や発表は気象庁の管轄である。 不思議な組織構造とも言えるが、三つ巴で違った角度から注視する重要案件であるとも言える。 横道に外れたので「地質標本館」にもどるが、
「ブラタモリ」に登場した説明や模型の多くが展示されており、多少ネタバレ感をいだきながら、終了記念にふさわしいと思った。

敷地内には「サイエンススクエアつくば」という、こちらも予約なし、入館料無料の施設もあり、「地質標本館」のすぐ隣の建物である。 こちらはまさに”工業立国日本”を支える研究を展示している施設であった。 様々な製品展開が期待される新素材カーボンナノチューブの製法、テレビでも話題の生活支援ロボット、人間の脳と機械をつなぐ技術ニューロコミュニケーター、無充電で長時間使用可能なメモリー機器につながるスピントロ二クスなど、様々な研究成果が展示されており、成果を見ているだけでは日本もまだまだ捨てたものではないとも思えたが、なんとなく成果のインパクトが小さい気がしたのは、ビジネスにつながる製品やサービスではなく、その元となる要素技術が多かったためか? 「産総研」のキーワードとは直結しているものの、そのキーワードが日本または地球が抱える問題点へのアプローチに聞こえ、問題点へのアプローチが日本の将来の繁栄を支える技術力となり得るのかが、私には読み取れなかった。 私が浮かぬ顔をしていたのか、係りの女性の誘導で、小さなテントの様な三角すいの囲いの真ん中の椅子に腰かけた。 そのテント内いっぱいに音楽が流れたがスピーカーが存在しない。 布そのものがスピーカーらしい。 手で触れてみると確かに布全体が振動していた。 ”工業立国日本”はどこへ向かうのか?

以前、「産総研」を訪問したことを思い出した。 大通りを挟んだだだっ広い「産総研」の敷地の一角であった。 「計量法」という法律がある。 第一条には「計量の基準を定め、適正な計量の実施を確保し、もって経済の発展及び文化の向上に寄与することを目的とする」とある。 この世の中には様々な計量単位があり、それを使って生活しているのだが、それらの表示が間違ったものであってはならず、例えば、「重さ」であれば、「産総研」の管轄下に”国”の基準器が存在し、「重さ」を測って経済活動をする会社には基準分銅があり、社内で使用する「計り」はその基準分銅で定期的にチェックし、数年に一度外部機関の監査を受けるのである。 製品表示にある内容物〇〇g、タクシーのメーター、市販のものさしまで、すべての数字表記はこの法律の管轄下にあり、「産総研」が執り仕切っているのである。 考えてみると生活の原点になっている。 その法律運用の中心的な役割を担う「計量士」は、法令、数学、物理化学など文系と理系の能力を必要とする国家試験の合格者に与えられる資格である。 社内で取り扱える数値とその検査の実施者に関して、不正確な表記の増加傾向、特に輸入品への対応として、厳格化の流れがあり、その程度と時期によって、必要になるかもしれない狭き門の資格取得は、民間企業にとっては死活問題であり、法令化される前に準備を進めておく必要があるのである。 その程度と時期の確認のために訪問したのである。 特定国立研究開発法人であり、公務員に準ずる研究者以外にも、企業、大学、公的研究機関、海外からも含め四千人以上の研究者が、日本の過去を解明し、問題解決し、未来につなげるような重要な研究を、こんなに身近な所で行っているのである。 工業立国日本の復活に期待したい。









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