ツバメの習性

現在お世話になっている会社にツバメの巣がある。 事務所へのお客様用の玄関口と、その脇に直角に面した従業員用の通用口がある。 その両方に目を光らせている防犯カメラ。 そのカメラとカメラを支える金具に巣を作り始めたのは、4月の下旬だったと記憶している。 同じ場所は年末の大掃除の時に、防犯カメラのためにも以前の巣の残骸の片づけを行った記憶があるが、会社では想定内のようで、糞害を避ける意味で、通用口の引き戸の開け締めを左から右に変え、受け皿を置いて対応している。 それから約一か月半、五羽のツバメが敷地内の電線に停まりさえずっており、三羽が無事に成長したと思われる。 

◎空の巣のそばを飛び交う燕たち
(ひなが巣立つと近くの電線に数羽の燕が停まりさえずりにぎやかだが、残った玄関口の巣はひっそりとしている。)

調べていると、非常に我々に身近なはずのツバメの習性は興味深い。 まずは北半球にしか生息しないようで、餌の虫が増える頃、九州では早春、本州では四、五月に、子育てのために南の国からやってくる渡り鳥であり、秋も終わりに近づく頃に、南の国へと戻っていく。 日本では古くから、里山付近で、敵から身を守れるように民家の軒下などに巣を作り、水田や耕作地で害虫を餌としているため益鳥とされてきた。 鳥類保護法で守られており、子育て中の巣の撤去は罰則対象らしい。 知らずに撤去は危ないところだった! オスは燕尾服の様な尾っぽとさえずりでアピールし、決定権のあるメスのお陰でカップル誕生。 一度カップル誕生すると”幸せなことに”一生続くらしい。 巣作り、子育ては役割分担できたカップルの共同作業で、昨年の巣や他のツバメの巣を修復して使ったり、元の巣のそばに新たに作ったりするらしい(同じ場所付近に戻って来るようである。) 巣作りは早朝から午前10時ごろまで。 その間に泥や枯れ草など巣作りに必要な材料を運び創作活動。 10時以降や雨の日は、泥が乾くのを待つ時間やカップルのコミュニケーションに活用するそうである。 何かいろいろ人間的な、または人間がお手本にできそうな習性である。 巣作りは約一週間、子育ては約六週間らしい。 つまり、梅雨の前には子育て終了! 場所やカップルによっては、年二回の子育てもあるようである。 子育てが終了すると巣には戻らず、湿地帯のヨシ原に集団で暮らすらしい。 集団の理由は学術的にはわかっていないそうだが、私はイワシの群れ同様身を守る手段と思った。 初めて知ったが、「ツバメの集団ねぐら入り」という画像のユーチューブ投稿も多く見られた。 
野生のツバメの一生は三年程度だが、飼育のツバメは十年も生きるらしい。 ちなみに検索の途中で「ツバメ速報」を選択したら、同一カード三連敗とか、背番号55の肩を落とした後ろ姿が…。 ヤクルトスワローズもツバメである。 ヤクルト球団の前身、国鉄はツバメマークであった。

ツバメと言えば思い出す童話がある。 「幸せな王子」というヨーロッパの話である。 小学校の教科書だったか、どこかで見かけたものかは定かではない。 フランスのある地方で、その死後銅像(話の中では、材質は不明)となり庶民の暮らしを見続けてきた王子様が、その貧しい暮らしに心を痛めていたところ、越冬のため南下する途中のツバメに、自分の像に装着されていた宝石や金箔を、人々に届けるようにお願いする話。 結局ツバメは、越冬できずに、装飾品が何もなくなった王子像の下で亡くなるというもの。 最終的には王子もツバメも神様によって天国に運ばれるのだが、子供の頃の私には、越冬できずに死んでしまったツバメのことがインパクトが強すぎたようである。 また最近の私的な言い方をすると、ツバメがそっと置いて行った宝石を拾った少女は、持ち帰って生活の足しにしたわけだが、日本なら交番に届け、貧しくも健気に生きる美談!のはずだが…、というのはちょっとひねくれすぎているか???

ツバメの場合は、元の巣にはそれほど固執していないようであるが、元の場所や生まれた所が分かるということだろうか。 鳩や犬の場合は、遠くから戻ってくる習性の話をよく聞くが…。 人間っぽく言うと、数ある選択肢の中で、自分が生まれ育った所は自分の経験の裏付けがあるため、選択肢としては第一候補になり、感情的にも故郷への思いになるのかもしれない。 結局、自然界は弱肉強食であり、身を守ること第一とすると第一候補には固執しないのであろう。 人類においても戦争によって歪められ悲しい歴史をたどることがしばしばであり、同様である。 メディアの報道では、今のウクライナ問題もそうであり、都市を壊滅すること…、子供たちを大量に連行すること…等、力により選択肢を消し去っていく。 北方領土も同様で、追い出された人々は故郷への感情を持つが、その後他の土地で生まれ育った二世は…、その土地に新たに移住してきた親からそこで生まれ育った二世は…、時の流れが複雑化する。 二千年以上も続くユダヤとパレスチナの発端も、紀元前に争いに敗れ祖国を追われたユダヤの人たちと、そのユダヤの人たちが二十世紀になって建国するために住んでいた土地から追い出されたアラブの人たちの問題、と私は理解している。 そこに、英雄「アラビアのロレンス」(イギリス人将校)が登場して間違った仲裁をしますます複雑に…。 不幸にもどれも世界を思いのままにしたヨーロッパ帝国主義的感覚の不幸な出来事である。

会社のツバメの巣から思わぬ展開になった。 今年の子育ては終了したのか、二回目が始まるのか。 巣作りから子育てまで観察してきた私としては、機能不全の防犯カメラを復活させ、会社のセキュリティを守るためにも、「合法的に」巣の撤去を考えなければならず、悩ましいと思っていた。 しかし朗報。 大きな声では言えないがこの防犯カメラは現在使用していないらしい。 人間もツバメの習性をお手本として生きるべきと思いつつ、日本の四番バッター村上の復活を待ちつつ、今後のヨーロッパの道徳感に期待しながら…。




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コメント

  1. 匿名6/29/2023

    ブログから小説に進化しつつある文章!(^^)!いいね

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