肩身の狭い場所

 筑波山の麓にある街がつくば市である。 2021年12月17日「シニアの挑戦…筑波山登山」という記事を掲載したが、主役が筑波山であったため、麓の街として簡単な説明だけで終わっていた。 筑波学園都市構想は、1963年の閣議で決まり1969年着工の国家事業である。 科学技術・高等教育の振興と東京一極集中の緩和がその目的であった。 どんなプロジェクトでもそうであろうが、軌道に乗るまでが重要だったようで、(当時)6省庁にまたがる縦割りの壁を乗り越えなければならずプロジェクトは遅れ気味に…。 1973年に筑波大学開校、1978年には東京教育大学と統合。 東教大と言えば子供の頃サッカーが強かったことを覚えているが、筑波大に代わってからもサッカー、柔道、陸上などスポーツの強い国立の総合大学である。 私が引っ越してきた頃、科学万博開催の1985年はまだまだ創成期だったようだが、人工都市らしく中心部付近には西武デパート、ジャスコ、ダイエーなど(いずれも現在は撤退してしまったが)の商業施設、第一、公園、駐車場など主要な都市機能が集中し、東西南北を大通りで囲まれた便利な街のイメージがあった。 その東大通りと西大通りを斜辺とする南側の県道の底辺約2km・斜辺約12kmの二等辺三角形のような形状の周辺に、筑波大学や研究機関が点在している。 大通り以外の道路は、細い旧道が毛細血管のように張り巡らされ、迷ってしまうと車のUターンも困難だったりする。 当時の中心地区では、「児童の親の殆どが博士」、「飲み屋に広い駐車場」、「人口割で自殺者の多い街」などいろんな代名詞があった。 政府関連の研究機関だけでなく民間の施設も多く点在していた。 私が勤めていた外資系IT企業は、中心地区から少し離れた所に工場誘致予定で本社移転していたが、今は有名なネット販売会社の巨大な倉庫ができている。 時代の流れである。 主な政府の研究機関だけでも、ニュースにもよく登場するところでは、高エネルギー加速器研究機構防災科学技術研究所、宇宙航空研究開発機構、理化学研究所、産業技術総合研究所などがあり、数十研究機関に及ぶ。

以前掲載した国土地理院は、私のお気に入りの場所である。 「地図と測量の科学館」という見学施設があり、吹抜けのエントランスホールには10万分の1(大人の大きめの1歩(約1m)が100Km)の日本地図があり、赤青の立体メガネを掛けると山の高さ、海の深さを感じることができるらしいが、入館の際私にはそのような案内はなかった。 残念! 1階はエントランスホールの他に売店と休憩所、二階は展示施設や会議場になっている。 地図や測量の歴史や関連する資料や器具が展示されていたり、パソコンで調べものをすることができるコーナーがあったり、外庭には小型飛行機の展示(空からの測量の一号機)があったり、楽しめる施設である。 国土地理院の役割説明はほぼ不要と思うが、”日本の隅々までの国土を正確に測定し描くこと”なのである。 しかしそれは、国土を守ること(領土として、防災として、形の変化として)、社会のニーズを支えること(自動運転、スマート農業など)など、測定し地図にすることは結果的に多岐に影響を及ぼす事が理解でき、他国の同様の機関と情報共有することで、地球規模での変化を読み解くことができているらしい。 また、江戸時代の伊能忠敬らによる日本全国歩き回っての測量、測量のプロである国家試験の測量士、現在では航空写真や衛星写真などによる測定や修正。 形だけでなく、立体的な高度や深度の測定も行っている。 私はここの売店で、2万5千分の1の縮尺の地図や本人だけが満足する地図関連のグッズを購入するのである。 

農業・食品産業技術総合研究機構(略して農研機構)の「食と農の科学館」という展示施設がある。 農業なのでたくさんの敷地が必要であり、かつては別々だった機関が合体してできた機構であるため、他の研究機関が土手や木々で大通りから中が見渡せない、かつ、立派な門に守衛がいるのが普通だが、この機関は一般道を車で走行中に突然、道路に「ここは農業水産省構内」の表示が出てくるほどで、両側の桜並木は近隣では有名な花見スポットである。 その一角の「食と農の科学館」は多少地味で、コロナ前は予約なしであったがコロナ禍ということで完全予約制、ただ訪れたのが平日でもあったことから建物入口で電話(予約?)すると入館できた。 写真撮影OK、YouTubeもあり、SNS投稿には便利である。 入館すぐに女性係員がビデオを見せながら説明してくれた。 その活動は大別すると6項目。 まず「おいしいを創る」では、シャインマスカット、紅はるか(サツマイモ)、ゆめちから(国産小麦)、デコポン、フジ、幸水などお馴染みな食べ物は農研機構の作品。 「便利を創る」は機械化、IT化、植物工場。 青いキクや光るカイコなど「新しいを創る」。 病気、害虫、温暖化対策など「環境を守る」。 品種の管理など「資源を守る」。 それらを「わかりやすく伝える」。 展示物はその活動成果が主体であり、はじめに使命と成果を説明してもらわないとわかりにくいかもしれない。 親切に説明してくれた係員に「日本の自給率の低さ、農業従事者の減少」などの質問が湧いてきたが、何となく…噛み殺した。

地図購入で訪れた国土地理院をきっかけに、国の研究機関の見学施設を調べてみると、題材が豊富である。 今回の2件はいずれも無料の施設である。 ほかにも予約が必要だったり、団体見学のみだったりの見学施設もあり、つくばサイエンスツアーオフィスと言う紹介してくれる組織まであるようだが、残念ながらバスツアーの団体のみの対応のようである。 茨城県民になってから35年以上経つが、研究機関の見学施設にはあまり足が向かわなかった。 興味深い施設群である。 ただし、展示物には漫画やひらがなの目立つ説明が多く、将来を担う子供たち向けに作られた見学施設が多いようで、シニアの一人見学は多少肩身が狭く、居心地は悪い。 「子らの列筑波おろしの展示館」という一句を詠んでみた。 句の説明は全体の流れでご理解いただきたい。 今回は平日の無料施設で「子らの列」はなかったが、「ちょっとだけ…」ムリをしながら、これからも機会があれば紹介してみたい。


コメント

  1. 匿名1/18/2023

    つくば学園都市については、田中角栄総理大臣時代に計画されたとか。同級生が、通産省(当時)に入り、つくば勤務になったと嘆いていた時、ほんと―になーんにもなかったもんな―。なかなか予定の鉄道もつながらなかったし、陸の孤島のようなところでしたが、今やバリバリのテクノゾーンになってますね。政治は30年後を想定して・・・を目の当たりにした感じがします。

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