ある週末の一日

南向きアパート5階の部屋は見晴らしはよいが、朝日にも夕日にも影響を受ける。 カーテンはほとんど飾り程度で開け放たれていて、晴れた日は早起きになる。 ある週末の朝、6時過ぎに目が覚めると、天気を確認し洗濯機を回し始める。 それからタイマーで炊きあがっているご飯を確認し、定番のレトル
トカレーとコーヒーの朝食。掃除機をかけ、洗濯ものを干し終わる頃、商業施設の食品売り場はオープンしていて、週末しか乗らない車で一週間分の買い出しに出て、買ってきた食料を小さな冷蔵庫に詰め込むと、週末の朝の仕事は 終了。 トレーニングウェアに着替えて、9時半過ぎの久我(こが)石原町始発の特13系統四条烏丸(からすま)行きの京都市営バスに乗車する。 今日のターゲットは妙心寺、アパートからは最短の道路で約10キロ、行きは公共交通機関、帰りはジョギングという私の中で最近流行りの観光手段である。 市バスを西大通四条で乗り換え、金閣寺・立命館大学方面の2xx系統で円町(えんまち)下車。 市バスは220円均一区間で1日乗車券(600円)があり3回以上乗り換える場合はお得(それ以外にも同経営母体の地下鉄もバスも利用できる900円の1日乗車券もあり、京都観光には便利である)。 今回は2回しか使わないので、雨の日通勤に使っている市バスの回数券を使用する。 円町からは山陰本線一駅分約1キロの徒歩で到着である。

妙心寺は時期にもよるだろうが、清水寺・金閣・銀閣などよりも観光客が少なく、お寺らしくこれが2回目。 今回の記事のために調べてみて驚いたが、石庭で有名なあの龍安寺はこのお寺の塔頭(たっちゅう:付属の建物)の一つのようで、多くの塔頭が存在する総本山なのである。 天井に描かれた龍の絵が有名である。 広い敷地内を歩くのは無料だが、その有名な龍の絵などは建物内部でお寺の方の説明付きで有料となる。 龍の絵は、見方によって天に登るようにも天から降りるようにも見え、またどこから見ても目が合う「八方睨み龍」と呼ばれるようだが、残念ながら私にはどれも認識できず。 しかし、重厚、壮麗なものであり、無駄や失敗の許されない観光旅行と違い、気持ちに余裕があり、京都の住人らしい気分で満足できた。 最寄りの駅は花園、そこから山陰線は太秦、嵐山を抜けて京丹波から福知山へと続くのである。

帰りは例によってジョギング。 12時前には妙心寺出発。 碁盤の目のような京都の道はわかり易いが、川や昔の建物の影響で歪むところがある。 天神川の川沿いをひたすら南下すると、あの高校駅伝の出発・最終地点で有名な西京極運動公園に出る。 そのまま南下、七条通あたりからくねくねと南西に向かって進むと、桂川大橋に出る。 桂川を渡ると有名な桂離宮がある。 ここは赴任中に訪問しなかった悔いの残る場所のひとつである。 理由は、御所、桂離宮、北山(京都盆地の北のはずれ)にある修学院離宮は宮内庁の管轄で、申し込んだ上の抽選で観光できるスポットなので、旅行会社経由の観光向きというか、最近では外国人が多いということで断念していた。 桂川大橋は渡らず桂川の土手を南に走ると、幹線道路の久世橋、これも渡らずもう一本南の祥久橋へ(安易な名付けといつも思うのだが…、川の両岸の地名、吉祥院と久世をつなぐ橋)。 
ここまで来るとあと2キロの道のり。 通勤路でもあるが、この橋からの景色はいろんなことを思う。 京都で一番高いビルだった京セラ本社ビルとそれを追い越した日本電産本社ビルは橋を挟んで東西に(観光エリアはビルの高さ制限があり、この辺りに高いビルがある)。 北東部は京都タワーとその手前の東寺五重塔の相輪がかすかに見える。 北は衣笠山と嵐山も。 あの鳥羽伏見の戦いの鳥羽も近く、川の流れ、時の流れ、大地の上に積み重なる風景、京都ならではの思いが浮かび、「自分への応援歌」を口ずさんだ。

1時半前後、アパートに帰り着く。 辛坊治郎の「そこまで言って委員会」という読売テレビ(日本テレビ系)の番組がある。 これが関西だけの放送で関東では放送されないのは残念である。 関西のテレビ番組というと、吉本新喜劇のように私には面白いのかコメントできない、まるで水戸黄門の印籠のシーンのような決まり文句のお笑いの定番のようなセリフ…、関西の放送はそんなお笑いを軸とした放送ばかりかと思っていたのだが、真面目な番組になると、曖昧な表現や無意味なコメントが少なく、またツッコミも鋭く、真実に迫る率直なコメントが目立ち、痛快で私は好きになっていた。 日曜日の午後2時前後の番組である。 テレビを点け、番組を見ながら、一週間分のYシャツにアイロンを掛ける。 当初はクリーニングに出していたが、節約と単身赴任らしいスキルを求めて、ネットで学習しアイロンを買ってみた。 できた! アイロン掛けが終わると、昨晩からの食器を洗い、本日2食目(昼夜兼用)の食事の材料を準備する。 食事はアルコール込みになるので基本は自炊。 と言っても、フライパン・トースター・電子レンジでできる範囲(焼く、蒸す、炒める、煮る)で名前のない料理なので、できる料理を問われても答えられない。

シャワーを浴び、材料に火を通すと、やっと缶ビールのフタ(正式名称はプルトップではなくステイオンタブ)を開ける。 まだ明るい時のビールは…これぞ至福の時。 ゴルフやその他スポーツ番組を見ながら浸る。 今日、いや今週一週間はこの時間のために有ったかのような…。 途中CMの時間を利用して、観葉植物に水やりをして、洗濯物を取り込む・たたむ・仕舞う。 単身赴任するまではカラッとふっくらと乾いた洗濯物を処理する楽しさ、心地よさは未経験だったのだが…。 朝晴れた日は期待が膨らみ洗濯に励むのである。 後は、ダラダラといつしかビールから他のアルコールに代わり、気が済むまで…。 私のテレビは、装置名は覚えていないがアンテナジャックからその装置を通すと、大きめのパソコンモニターに、パソコン画面とテレビ画面を並べて表示できていて、テレビ好きの一人暮らし”ながら”人間には最適であった。 飲酒状態でテレビを見ながら不謹慎とは思いつつも、明日以降一週間の仕事の計画、資料準備を行って一日が終わる。

京都単身赴任中の「ある週末の一日」である。 単身赴任の経験がある方は同じような生活だったかもしれないが…。 人間の記憶力は何か儚いもので、繰り返し活用しない情報は、徐々に脳の奥深くに押しやられて行くみたいな、すぐには取り出せなくなっていくものである。 当時からちょうど2年が過ぎ、すぐには取り出せないところに行ってしまう前に書き留めておこうと思ったわけである。 書き留めてみると、与えられた環境下で前向きさが出ていて私は嫌いではない。 赴任後の今はどうなのだろう! 恵まれ過ぎる生活では同じ様にはできないのか? 代償となる心地よさの制限の問題か? チャレンジの大きさの問題か? 先のことを考えると、まだまだ”殻の外の生活”は始まったばかりである。



コメント

  1. 懐かしいね~! 月に1、2度の早朝乱入者と朝からビール、乱入者泊まり込み、飲んだくれてからの深夜ライブ、JAZZライブ見た帰りの河原町寿司屋での痛飲=へべれけ、2号徳利何本飲んだかなー ( ^^) _旦~~ という生活もありましたね。

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